人生100年時代に向けたDentist's Life

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昨今話題になった「ライフ・シフト 100年時代の人生戦略」においてリンダ・グラットン氏は「100年ライフ」の到来を示します。

過去200年に渡り平均寿命は10年に2年以上のペースで伸びてきた。今20才の人は100才以上、40才の人は95才以上生きる確率が半分以上ある。

 

平均寿命が伸びることで、社会の高齢化により拍車がかかります。現在日本は3人の若者が高齢者1人を支える形になっていますが、2065年には1対1、つまりマンツーマンで支えることになる見込みになっています。

訪問歯科に国を挙げてより一層力を入れてゆくことは既定路線でしょうし、社会保障費についても2025年度には約149兆円に膨らみ(2015年は約120兆円)、その後さらに増大していくと予測されているため、唯でさえ予算枠の少ない歯科医療に関しては、予防歯科を浸透させていく事が死活問題なのは間違いないと思われます。

私たち自身に置き換えて問題を眺めると、生きている間に現行の社会保障費システムに限界が訪れることは明らかな中、100年時代が到来するので。生きてゆくのが今よりもハードになる中、より長く生きることになるのです。

歯科医師として「人生100年時代」を賢く生き抜く手段。

①資産運用
②節約
③現役として働く期間を伸ばす。

①は不可能ではありませんが、現状で相当額の資産がない限り現実的ではありませんし、歯科医師でも勤務医ではなかなか容易な手段ではないと言えます。

②は日々の生活という事になりますので、ここでは言及を控えます。

③の「現役を伸ばす」ということ、「80代現役時代」を真剣に考えていく事は、誰もが準備可能で、備ええる必要性がありそうなので、この点を深堀して考えてゆきたいと思います。

今回は開業医ではなく、勤務医として人生100年時代を生き抜く処世術を考えたいと思います。

勤務医として働く歯科医師の多くは、1院のみで常勤勤務をするケースより、非常勤の掛け持ち勤務や、常勤と非常勤を合わせた勤務がマジョリティであるため、世間一般のサラリーマンよりは1箇所依存性ではないとも言えます。

それでも70歳を越えた勤務医は現在のところ非常に少なく、もしも腕が満足に動かなくなったことを想像すれば「80代現役時代」に不安を感じる方は多いと思います。腕よりも前にまず目が劣ってゆくケースがほとんどです。

昨今、世間で叫ばれる「働き方改革」とは何か?

これは会社や組織にしがみつく生き方がこれからの時代には難しくなることを暗に意味しています。これは会社や組織にしがみつく生き方がこれからの時代には難しくなることを暗に意味しています。『時間は与えるので70代、80代まで長く働く戦略を自分自身で考えましょう」というメッセージであると捉えると、国の意図する事が見えてきます。

そして、この働き方改革の本題である【雇用改革】に近い将来日本は着手してゆくはずです。被雇用者(勤務医)の雇用を保証され続ける権利の修正です。歯科業界に勤めていると、むちゃくな環境が多いため、『雇われる側には権利・人権なんてないんじゃないか!』と感じてしまうことも多いかもしれませんが、実際に解雇という処置は現在の日本ではほぼご法度に近い状態で、訴えられたらほぼ間違いなくアウトです。

しかしながら、この解雇制度をより緩やかにする事によって(簡単に解雇ができるようにようにする事によって)企業や歯科医院においても雇用促進/流動性が生まれ、経済的にはプラスに働くと見られています。実際、近年指示待ちではなく、キャリアに当事者意識をきちんと持つことが必要な時代。どんなことをしていけば良いのか。それは第二部にてお話致します。

「人生100年時代」に向けた仕事のスタンス ~第二部~

「人生100年時代」=「80代現役時代」を実現するために必要なこと。

これからの働き方の中では、有形資産(お金・モノ)より無形資産(知識・健康・仲間・変化への対応力)が必要と言われています。中でも最も重要とされていることが「変化への対応力」=「変身資産」です(これについては後ほど詳しくお話していくことにします)。知識1つを取っても、「5年先に使える知識は15%の可能性がある」と元オラクル幹部でテスラなどでもリーダー育成を手がけたリズ・ワイズマン氏が話しています。

歯科業界でも時代遅れの知識や技術は皆さんも認識があるのではないでしょうか。経験を積んだベテランこそが危険な存在になりうる中で、学ぶ姿勢は経験より重要になってきます。そこで「変身資産」の話になります。

「変身資産」は、大きな変化に対応する力、助けてくれる人的ネットワーク、新しい経験に挑戦する意欲と考えてください。それを蓄えるために有効なことは「コミュニティを広げる」ことと言われています。要するに、普段からいる居心地の良い場所・仲間だけでなく、少し距離のある人との関係を築き、自分の参加出来るコミュニティを広げることが重要になります。例えば、副業をする、全く行かないジャンルのセミナーに行く、居心地の良くない場所に参加するなど色々な手段が考えられます。

中でも副業に関しては、コミュニティを広げる以外に、新しいことに挑戦する力、新しいビジネスの中に起きる変化への対応力を鍛えるのに最も適していると言われています。簡単ではありませんが、常に学ぶ姿勢を持ち、さらにそれを座学だけで終わらず現場での実践や行動に移すことで自分の経験を増やしていくことが「変身資産」になっていくのです。

「30代モヤモヤ病」という言葉があります。

自分の成長が止まっているのではないか、この先30年もこれが続くのか、このように思っても居心地の良さから何も行動しなければ劣化の道を進むことになります。職場に関しても、仕事内容に関しても「挑戦する・適度な負担をかける」ことは必要だと言えますし、さらに言えば副業や兼業、または別のコミュニティで新たな経験をしていくことが本当のスキルアップになる時代です。

歯科医師の場合、開業をするかどうかでキャリアの展望は変わってくるところは当然あるでしょう。ただ、勤務医だけでなく、開業を考えている歯科医師の方でも、自分の能力は今、伸びているかを振り返る必要があります。

現代は「経験が資本になる社会」であるということを意識したキャリアデザインを心がけていくことが重要です。

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